こんにちは、Henzelです。
今回は心因性視力障害に関するお話をします。
最後のほうに私が外来でよく見る心因性視力障害と診断された親子の特徴を紹介したいと思います。
そこが心因性視力障害を克服するヒントになります。
心因性視力障害とは
心因性視力障害とは、眼には何も異常がないにもかかわらず、心理的な原因によって起こる視力障害のことをいいます。日常的なストレスが関係してきます。
小学生の女児に多いと言われています。
ストレスの原因としては家庭環境や学校での友達や先生との関係性、習い事、受験など我慢していることが心理的ストレスとなっています。
単純に友達がメガネをかけていて自分もかけたいという憧れがストレスになっている子もいます。大人からみると想像もつかない理由ですが、子供の心は繊細なのでそういった些細なこともストレスになり、視力障害につながることもあるということです。
そのためこれは眼の病気ではなく心の病気なのです。
心因性視力障害の症状
視力障害
最も多いのが視力障害です。
検査時には『見えやすくなるレンズ入れるね』と言いながら度数の入っていないレンズを入れると視力が出ることがあります。
プラスレンズとマイナスレンズを2枚入れ、度数は0(度数なし)の状態になるよう打ち消してレンズを入れていても『見やすくなった!』といって裸眼より見えるようになることもあります。
つまり、度数の入っていないガラスを眼の前に置くだけで視力が上がるということは眼には異常なく心因的な要素からくる視力障害ということです。
視野障害
次に視野障害です。
視野が極端に狭くなる『求心性視野狭窄』や、検査しているうちにどんどん小さくなっていく『らせん状視野』という特有の視野障害が現れることがあります。
色覚異常
色の見え方の障害です。
瞬目過多
目をパチパチする症状です。
心因性視力障害の治療方法
治療方法はこれ!というものはありません。
なぜなら眼の病気ではなく心の病気だからです。
心因的・精神的な原因が解決すれば消失します。
なのでその子の眼の状態、生活環境に合わせて眼科医と相談すると良いでしょう。
・・・と言ってそれで終わったら意味がありませんので、どういったことをするか少しご紹介します。
度数の入っていないメガネを処方
心因性ではプレーンレンズ(度数の入っていないメガネ)をかけるだけで視力が出ることがあるので、メガネを処方して経過をみます。
点眼処方
これは視力障害を治す点眼薬ではありません。
『これをきちんと続けて点眼すれば視力が出るようになるよ。』と暗示をかけて経過をみる目的です。
なので実際はビタミン剤だったりします。
ストレスの原因をみつけ改善する
ここが一番重要です。今回私が最も伝えたかったのはここです。
メガネや点眼のような暗示に関しては、少し表現が悪いかもしれませんが結局は『子供だまし』です。
ストレスの根源は学校や家庭環境、勉強などによるストレスが大半です。
暗示をかけて視力がでれば良いですが、結局のところ心のストレスですから、そこを改善しないと意味がないですよね。
では具体的にどうすればよいか。
- 親の仕事が忙しいなどの理由で子供にかまってあげられていないのではないか?
- スキンシップをとっているか?
- 受験などで過度な期待をしすぎていないか
- 塾や習い事で負担が大きくないか
- 両親の夫婦喧嘩が頻繁に起きていないか
- 兄弟仲良くしているか?
- 兄弟を平等に接しているか
こういった内容に関してもう一度思い返してみてください。
『親が原因となっている可能性がある』
このような言い方はきついかもしれません。
すべてがそうというわけではありませんのでお父さんお母さんがご自身を責める必要はありませんが、子供の繊細な心は身近な環境のちょっとしたことでストレスを感じてしまうということです。
なので親が原因になっている可能性があるということを疑ってみてください。親としては辛いですけど子供のためです。
私が勤務している病院にも心因性の子が時々きます。
そのときの親子の様子を見ているとなんとなく心因性になる理由がわかることもあります。
それも少し紹介します。
心因性視力障害と診断された親子の特徴
親が子供に関心を持っていない
子どもが検査をしているときに親は後ろでずっと携帯電話を触っていることが多いです。途中親のほうを振り向いても、自分のほうを見てくれていなくて寂しそうにしている子を何人も見てきました。
やはり子供はお父さんお母さんに見守ってもらいたいのですよね。しかし、心因性になっている子の親はみんながみんなではありませんが、一部こういった様子が見受けられます。
子どもの言い分をきかない
心因性は心の病によって見えないのですが、まずこれを親が理解できていないことが多いです。たしかに眼には異常がないわけですから見えている人間からするとイメージしにくいのは確かです。しかし本当に見えないのです。
検査時に子供が『見えない』というと親が『それも見えないの!?』のような発言をする方もいます。
見る気がないだけではないか?のようにつぶやく親もいます。これは私もさすがに子供の前でそれ言うな・・・と思いましたけどね。
例をあげたのはあくまでも一部ですが、まずは子供が見えないことを理解してあげましょう。
待ち時間ずっと勉強している
これに関しては視能訓練士だからといって各家庭のやり方に口出しするべきでないことは重々承知しておりますが、心因性になっている子を観察していると待ち時間にずっと勉強している子が結構がいます。
実際に中学受験で名門学校目指している子で心因性になっている子を多く見てきました。
単に待っている間に宿題をして家に帰ったらしなくていいようにという目的もわかるので、待ち時間に勉強や宿題をすることがダメと言っているわけではありません。
ですがやはり受験やテストでの親の期待に応えなければならないプレッシャーが負担となりストレスが溜まっている子が多いのも現実です。
以前中学受験を控えている患者さんに学校で嫌なことはなかったか?勉強はどのくらいしているのか等、学校や家での生活状況を確認したところ、その子の勉強時間がえぐいくらい長く、自分なら吐いているな・・・と思うくらいでした。
受験が悪いわけではありませんが、子供がしんどくならないように見守ってあげてほしいなと感じました。
家庭環境の変化
これはあるあるかもしれませんが、親の夫婦仲が悪い、身内の不幸、弟や妹が生まれ親が自分にかまってくれる時間が減った等の家庭環境が影響しています。
これも実際に私が担当した患者さんに生活環境を確認すると少し前に妹が生まれてから心因性が現れたということでした。
この時に小学生のお姉ちゃんともスキンシップをとってもらうよう母親に伝えました。
そのお母さんは検査が上手にできていることをすごくほめていました。その時の女の子の嬉しそうな笑顔は今でも覚えています。待っているときも楽しそうにお話していましたね。
その子も数回定期受診していくうちに視力が出るようになり、その後も安定して見えるようになっていました。
家でもしっかりコミュニケーションをとり、心因的ストレスが改善したのだと思います。
子どもと向き合うことの大切さや繊細な心の変化でこんなにも体に変化をもたらしてしまうこわさを改めて感じました。
まとめ
心因性視力障害に関する医学的な詳しい情報は他のサイトにも載っていると思いますが
私が現場で実際に見たこと、感じたことを少しではありますがご紹介できたかと思います。
心因性はすぐに治るものではありませんが、日々の積み重ねで改善することができます。
なので、まずは1か月程お子様と向き合って、しっかり話を聞いてください。
忙しい時は少しでもいいです。向き合ってください。
辛いことがあった場合は抱きしめてあげてください。
お父さんお母さんが自分と向き合ってくれることで子供の心の問題は治ります。
ぜひ頑張ってみてください。
他にも眼に関する記事がありますのでぜひそちらも読んでくださいね。